だって紛らわしかったのだもの。
腹痛を覚えた。
朝、外出先でのことだった。
額にはじんわりと汗がにじみ出る。
おなかはゴロゴロ。
上は雨、下は雷。ダムは決壊寸前。
幸いにも近くにトイレがある。
混んでいる様子もない。
トイレに入るが早いか、ズボンを脱ぐが早いか。
いや、ズボンを脱ぐのが早いと社会人として完全にアウトだ。
トイレの個室に入った後、ズボンを脱いだ。
うやうやしく便座に座る。
ダムは決壊せずに済んだ。
雨はやんでいる。
雷はそのなりをひそめたようだ。
安堵。
何とか間に合った。
ことを済ませ、清拭し、パンツをはき、ズボンをはく。
水を流そうとしたところで、目に入ったのは張り紙。
「感染拡大のため便座は閉めて流してください」
コロナ禍の今、普段気にしなかった些細なことにも気を遣うようになった。
次の人、見ず知らずの人のことを考え、行動する。
・・・かと思えば、コロナにかかった人、やむを得ず外出しなければならない人を徹底的にたたく。
どちらも人間の人間らしい姿なのかもしれない。
私はどんなに追い詰められても、人のことを考えて行動できるのだろうか。
誰かを攻撃してしまわないだろうか。
その状況になってみないと答えは出ないのだろう。
願わくばそんな状況にならないことが一番いい。
だから手洗いももちろん。アルコール消毒もしっかりしていきたいと思う。
そう思って、壁に掛けてあったアルコール消毒をそっと手に吹きかける。
自分と、大好きな人たちと、知らない人の健康を祈りながら・・・。
アルコールと思って手にかけた液が便座クリーナーだったんだけど、人体に害はないよね?